熊本学習センター発行の新聞「きんぽう」に掲載された学生旅行の感想文

学生研修旅行感想文

 今回の旅行先、秋月と吉野ヶ里に於いて、共通して強く感じたことは「自然が作り出す鮮やかな色彩。」であった
 
私は一人旅が好きである。思いつくまま行動が取れるからである。それが二人以上の行動ならば各人の好みの差により行動に制限がかかる。一人が興味を持って観察しても他が興味を持たなければその観察は中途半端になってしまうと同時に他の人には無駄な時間を過ごす事になり「発見の旅」には不向きである。しかし、「仲良し気ままなブラリ旅」では無駄な時間もお互いの思い出を築く事になり大切な事である。しかし、今回の旅は「発見の旅」である。しかも時間が区切られていた。だからもっぱら一人で行動を取る事にした。秋月では丁度イベントをが行われており、そこでは地酒の試飲会が催されていた。向学心が旺盛な私は一つ一つ地元で作られるお酒をじっくりじっくりと舌で徹底的に観察した。観察の結果は「不明」であり私の舌の分析器では試料が少なすぎた結果である。今度機会があった際にはもっともっとじっくりと時間をかけて観察を行いたいものである。
 
秋月では草木染めの店が目に付いた。桜、茜、藍等々様々な自然の色の美しさに感動をした。綺麗な夕焼けの空を「茜色の空」というが、その絹に染められた茜色を見て気持ちが吸い込まれそうになった。しかし、値段を見て買わなかった。気持ちと財布は別管理の私である。その色の感動を残したまま吉野ヶ里に行ったら、弥生人の女性の衣装に茜染めの衣装があり再び感動した。古代から受け継がれた色、凄く綺麗な色、何か心を揺さぶる色。この気持ちをどのように言い表そうか。「温故知新」では何か取って付けたようで胡散臭い。日本手話で「歴史」と言う単語は両手で親指と小指を突きたて、手首を軽くツイストさせながら腕を上から下へ動かす。親指は「男」、小指は「女」の意味であり、それが親指と小指を両方立て軽くツイストさせれば「人々」と言う意味である。上から下に動かすのは時の流れを表している。「人々」に「時の流れ」を合わせて「歴史」の意味として表現している。この時の流れと人がリンクして人と人の繋がりその中に私が繋がっている。だから茜色を見た時に心を揺さぶられたのではないかと感じた。
 
日本手話は奥深い言語である。その深さを知ると口話(日本語)での表現が安く感じる事がある。その手話であるが、その獲得は完全に音声を心の奥底から捨てなければ無理である。口話(こうわ)と手話は連動していると思われているが実は文法が異なる全くの別物である。つまり手話を第一言語にしているネイティブサイナーは基本的にバイリンガルである。そして、本当の言語の区別は「音声言語」「視覚言語」の2つに大きく別れ、音声言語の中に英語や韓国語など口で喋り耳で聞く言語が分類され、視覚言語の中に日本手話やアメリカ手話、手話のエスペラントと呼ばれ国際会議などで活発に使われる「ジィエスティアーノ」など手で喋り目で聞く言語が分類される。しかし、視覚言語は凄い、飲み会でも口話では不可能な位置から話に参加してくる。どれだけ多人数で話しても手話なのでうるさくない。また、日本に住み、日常の営みで英語が便利な場面はまず無い。しかし、手話が便利な場面はたくさん存在する。静かさを保つ必要がある場所での会話や騒音が発生する場所での会話が一例である。つまり、手話は決してろう者の言語ではなく、本来は万人の言語で在るべきなのである。しかし、極普通の人は生まれてから音声言語に取り囲まれ、それが当たり前すぎるくらいに当たり前であるが故に口話の一種である英語に気を向ける人は非常に多いが、視覚言語の有用性に気づく人は余りにも少ない。私は視覚言語は21世紀の人類が獲得する必修言語でなければならないと思っている。
 
今回はとにかく歩いた。酒を飲んだ。そして出来上がった。時間が短く感じた。場所も近いので次回はゆっくりと見て回りたいものである。



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